国内のシャーガス病の患者数について
これまで、EUで実施された中南米移民の抗体陽性率を元に、国内患者数は最大3,000人程度と推定されていました。しかし、日本に居住する中南米移民は過去に日本から中南米に移民した、日系人とその子孫が中心となります。EUとは集団が異なるため、この推定患者数は正確ではないと予想されます。
日本赤十字社は2019年に、中南米移民からの献血血液における、シャーガス病スクリーニング検査の結果を公表しています。18000件の献血血液が検査された結果、3件から抗体陽性が確認されました。陽性率はわずか 0.016%であり、国内におけるシャーガス病患者数は、過去推定されていたよりも極めて少ない可能性があります。
また、長崎大学を中心とした研究グループにおいて、地域レベルのスクリーニング検査も実施されています。この場合においても、陽性患者はボリビア移民のみで確認されました。
これらの結果を勘案すると、国内におけるシャーガス病患者数は多くても数百人程度と推察されますが、国内においてもシャーガス病に対する公衆衛生対策、検査・治療体制の整備を行う必要があると考えられています。
シャーガス病の治療について
シャーガス病の原因となるT. cruziに対しては、ベンズニダゾール、ニフルチモックスの2剤が有効です。国内で治療薬の保管は行われていませんが、WHOから個別に取り寄せが可能です。
治療効果と副作用の観点から、シャーガス病の治療対象は、に限られています。
1)急性感染もしくは先天感染の患者
2)無症候性かつ50歳以下の患者
心合併症を有した方への治療は一般的ではないため、いかに早く患者を診断し、治療を行うかが重要となってきます。
これからの展望
検査可能施設の拡大
教育・普及活動
妊婦における抗体有病率調査