近年、梅毒患者の唾液からT. pallidum遺伝子が高頻度で検出されることが報告され、唾液は新たな診断用検体として注目されています。私たちのグループでは、以下の2点に取り組んでいます。
- 唾液を使用した簡便な検査法の開発と評価
- 梅毒患者の唾液における pallidum遺伝子検出
まず、簡易的に実施可能な等温核酸増幅法(LAMP法)を用いた検査法の開発に着手しました。簡便なDNA抽出法と、常温で保存可能な乾燥試薬を組み合わせることで、45分以内にT. pallidum DNAを20 copies/tubeまで検出可能な遺伝子検査法を開発しました。検査結果は、濁度系や目視で判定できます。
実際に、都内の医療機関と共同で行った研究では、唾液中のT. pallidum遺伝子検出率は、2期梅毒では86.5%、無症状の潜伏期梅毒でも47.4%と高い数値を示しました。一方、1期梅毒では27.3%と低い数値ですが、尿と組み合わせることで、検出率は48.5%まで上昇しました。新たに開発したLAMP法を用いても、同様の感度でT. pallidum遺伝子を検出することができました。
期梅毒では性器潰瘍ぬぐいスワブを採取することも可能なため、スワブ検体と唾液(または尿)を組み合わせたLAMP法を用いることで、検査感度のばらつきを抑え、早期診断率を高めることができると予想しています。